小学1年生に弟子入りした話。
塾講師のアルバイトは大体小学校高学年から中学生を教えることが多い。
それだって私には十分すぎるくらい若いのに、この前現れたちーちゃん(仮名)はしょーがくいちねんせいだった。ろくさい。やばい。ちっっっちゃい。
な、何を教えればよろしいかな、と戸惑っていたところ、繰り下がりのある引き算だそうで。
オッケー引き算なら任せて。
ちーちゃん、15ひく8行くで!!!
と思ったけど、そういえば15ひく8ってなんて説明するんだろう。
もう、私にとっては「15ひく8は…7!!!」でしかないため、途方に暮れてしまった。
見かねたちーちゃんパイセン、「さくらんぼ」という確信的方法を教えてくれた。
やばいやばい。大人としての威厳が0に収束しそう。
ちーちゃんパイセン、もう全然計算そっちのけでゲームしよーとか言ってくる。
このままじゃあかん、と思い、
「わかった!じゃもう1回ゲームしたら問題解こう!」
とメリハリをつけようとした私に衝撃のひとことがブチかまされる。
大人は、どうしていつもルールを作りたがるのか。
塾講師としてされた質問の中で最も難しく、そしてこれから先も答えが出るかわからない問いだった。
放心状態の私。
ふと気がつけば、ちーちゃんパイセンの背後には尾崎豊。
あぁ、そっか。
尾崎…尾崎の生まれ変わりなんや……!!!
思い出される、15の私。
ルールなんてクソくらえ。
盗んだバイクで走りだしたっけ。
嘘、無理。
色付きリップで精一杯だった。
ごめん。
でもね、色付きリップで先生と喧嘩して、こんな大人になるまいって心に決めたんだよ。
今の私の存在は、昔の私に対する裏切りだ。
自由になれた気がしたあの気持ちを、忘れたくない。
そう思った私は、ちーさんに弟子入りさせていただいた。
「ファッキン計算ドリル!!!」
ちーさんと私は、土手でしりとりやお絵描きを楽しんだ。
夕日が綺麗だった。
それからというもの、私はちーさんのおんぶや抱っこなどを任されている。
小さな体の割に、ちーさんの背負うものは大きい。
そんな彼女を助けたい、そう決心した、20の夜。
一生ついていきます!!!!!