形から入るタイプなので。
春の大会が終わった。
テストも終わった。
色々と頑張った6月だった。
髪をショートカットにしてみた。
なんとなく気分を変えたかった。
中学生以来のショートカットだ。
忘れもしない、髪を切ったあの日のこと。
あんたは絶対似合わないから短くしてもボブくらいにしときなさいよ、それは母とずっと守ってきた誓いだった。
しかし、なにかと大人に反抗したい時期にさしかかっていた私は、ついに幼少期からの掟を破って「吉瀬美智子のかみがたにしてください!」と美容師さんにお願いしたのだ。
ビューティフル吉瀬美智子さん
人生初のショートカットにドキドキの私は、自慢のヴァージン・ブラック・ロングヘアーを容赦なくザクッといかれたその瞬間からすでに隠しきれない不安を感じていた。
「これは、にあわないかもしれない…汗」
その後の軌道修正に掛けよう、相手はプロなのだ…。そう思い鏡を極力見ないようにしながらnon-noを読みふけった。めっちゃ気になる。でも、見ない。
賽は投げられた。
「はい、完成〜」
美容師の声がカットタイムの終焉を告げる。鏡に映っていたのは…
モンチッチだった。
美容師さんが悪いのではなかった。
私の髪が元来バリカタの直毛であるためショートカットに向かないということに加え、わりと顔もモンチッチに似ているせいで、ハンパ無くモンチッチだったのだ。
隣で髪を切っていた知らないお姉さんに、「あら〜、あんなにロングヘア似合ってたのに切っちゃったのね〜」と言われた。
母は何と声を掛けて良いのかわからない顔をしていた。
父には、なんと数日間絶交された。パパはロングヘアフェチだったのか、と気づいた14歳の春だった。
以来、はじめてのショートカット。
行きつけの美容師さんに「似合わなそうだったらやめる…」と弱気に提案したのだが、「絶対可愛くなるから大丈夫だよ!」と言われてついに切った。
あの日みたいにドキドキして鏡を見たら、自分で言うのも何だがかなり良い感じだった。嬉しかった。
髪をちょっと切っただけなのに、かっこいい自分になったような気がする。
つくづく形から入るタイプだなあと自嘲的な思いにもなるが、それでも気分は上がる。
美容師さんの力はすごい。
これを機に色々また頑張ろう!そう思った矢先に小指を椅子にぶつけたりなんかしてしまい、かっこいい自分にはなれないと思った。
ちなみに、母は褒めてくれたが、父はノーコメントであった。うーん、フェチは強し?