おとといのプリン
おととい食べたプリンがとっても美味しかった。
ただのプリンじゃなかった。なんてったて、そのプリンはわたしに春をもたらした。
我こそがスプリング代表ですと言わんばかりのうすピンク色のプリンはいちご味で、下に待ち受けるこいピンク色のソースもまたいちご味だった。あまいいちごと酸っぱいいちご、夢の2層構造。
最初はあまい部分だけ食べる。おいしい。次に、そーっと下の方を掬ってみる。おいしいい。最後は、思い切ってぐちゃぐちゃにした。おいしいいい。
だいすきな人が買ってきてくれたプリンだから、なくならないようにゆっくりゆっくり食べた。それでも、あっという間にプリンはなくなってしまった。悲しかった。
そういう時にわたしは、時間を巻き戻す力がほしくなる。できれば、プリンを食べ始める瞬間からじゃなくて、プリン買ってきたんだよって自慢げにしているところから、再生。なぜならその顔がすっごく可愛かったから。なんなら、そこだけの2時間耐久動画、見続けたい。ああ、神様おねがい!
なんて願っても瞬間は一度きりのもので、食べ終わったらすぐ解散です。桜が散るみたいにあっけなく食べ終わったプリンと過ぎた時間を惜しみながら、かゆい目こすって鼻ずびずびすすって自転車で帰る、そんな3月の夕暮れ。
プリン、打出の小槌で無限に出てきたらいいのに。ついでに、無限になんて言わないから、1回だけでも朝から晩まで会ってみたいのに。
でも、「如何して君はひとりしかいないの?」って問いかけは、椎名林檎先生ですら答えを持ち合わせていないみたいで、いわんやわたしをや。永遠を望んだ瞬間世界は滅亡、なのです。あーあ。如何してプリンもひとりいっこしかないの?あーあ。
美味しいものって、いつも、滅ぼすのは自分からなのね。